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(『なんだよ』って)
なんだよ、と、言い返しそうになるけれど。
今、そう問いかけるのは危うい造りの橋を、自ら危険を冒して渡るのと同じような気がして、押し黙る。
…小中高と、少年野球でその名を世間に轟かせ。
末は大学野球か、それとも、と世間から向けられる羨望の眼差しをものともしないばかりか、親の威光も鼻にかけることなく真っすぐに育った信晴は、同じ年頃の男子より物腰が柔く、紳士的であった。
そればかりか、高身長に見合った体躯、すれ違った誰しもが思わずもう一度振り向き見てしまう美男子とあって、信也とは違った意味で引く手数多にモテていた。
だから。
少年らしい愛らしさから脱却し、青年の、精悍さを惜しげもなく披露し始めたその輝きに目を奪われてしまうのは、当然のことであって。
(近寄られて、ドキッとするのは)
好きだからとか、そういうのとは…違う気がするし。
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