高校生の始まり

2/6
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
──これにて、今年度の入学式を終了とさせていただきます。生徒の皆さんは案内に従い各教室へと向かってください。保護者の皆様は保護者会が行われるため、その場にてお待ちください。なお、高等部より入学される生徒の方はその場にお残りください。本校についての説明を改めてさせていただきます── そんなアナウンスが講堂内に響き渡る。それを聞いたほとんどの生徒が席を立ち、出口へと向かい始める。彼は目を閉じて椅子に座ったまま次のアナウンスを待ち続ける。 「お待たせいたしました。説明をさせていただく前に資料をお渡しさせていただきます。お手数ですが、保護者様はお子様のお席の方まで移動をお願いいたします。」 そう言われたため目を開いて軽く周りを見回す。この場に残っている生徒は20名ほど。他の者は後ろを向いたり立ち上がり見つけやすいようにしているものもいたが彼は何もしなかった。座っていたのは一番後ろの端のため見つけやすいだろうし、何よりも体躯がいいのにも関わらず保護者席の一番前に座っていた父、凌牙(りょうが)の姿が挨拶中に見えてしまったのだ。 「いい挨拶だったな。さすが夏輝だ。」 ちらりと父に視線を向ける。黒のシャツ、ライトグレーのネクタイとチャコールグレーのベストとジャケット。家を出る時間が違ったため家でスーツ姿は見ていないが、まさかこの新調したスーツで来るとは思っておらず、思わず本音が出てきてしまった。 「そのスーツだと危ない人に見える」 190cmを超える長身で筋骨隆々としており、髪はハーフアップのお団子にして結んでいる。茶色に金色のメッシュを入れているため派手だ。彫りの深い顔と相まってスーツによればマフィアのように見えるが今回のはまだマシな方だと思っている。本当にマフィアに見える時はスーツを変えるように言っている。今日も指定したほうが良かったかと少し悩み始めたが大きな手が頭の上に乗せられた。 「そうか?かっこいいだろ」 「そーだな」 「棒読みじゃねーか」 『本当に思ってるか?』そう言ってくる父を無視して渡された資料に目を通す。読めば理解できる程度のことぐらいしか書かれていなかったため資料を閉じた。ずっと座っていたからか資料を見ていたらだんだんと眠気が襲ってきた。 「お待たせしてしまい申し訳ございません。只今より説明をさせていただきます─────」 そんな言葉を聞き、起きないとと思いながら眠りに落ちてしまった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!