第1話

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第1話

 ガルルルル……    放課後のとある高校の校庭。なにか獣のような匂いが立ち込める。そして呻き声だが誰も気にせず下校していた。  そこに一人の車椅子に座る生徒。彼は高校2年生、容姿端麗で女子生徒からも人気の伊集院圭佑。  地元の大手企業の御曹司だが三男坊ともあり他の出来が良い長男や次男に比べると扱いは下の方であることは昔から変わらない。  先日、部活動で大怪我をして一生歩けない体になりもちろん部活動も引退、付き合っていた恋人ともいざこざで別れてしまい絶望の淵にいた。モテてはいたものの高飛車ぶっていた彼には友達とも呼べる人や心から腹を割って話せる人なんぞいなかった。  今ここにいるのも辞めた部活動のメンバーと口論をし大口を叩いて一人で出ていったものの校庭まで車椅子で一人たどり着くまでにも時間を要した。  いつも電話一本で来るはずのお世話係も多忙ですぐ迎えにいけないとのこと。圭佑にはわかっていた。兄たちの仕事が忙しくなっているから自分のことはあと回しになっているのだと。 「あぁっ……」  絶望の縁に追いやられた圭佑はさらに校庭の根っこに引っかかり車椅子ごと転倒してしまったのだ。運の悪いことに周りには誰もいない。上半身は動くのだが肘を打った。とことん運のない男だ。  圭佑は自分を哀れに思った。 「いっつもなんで俺はこんな思いしなきゃだめなんだよ!」  と地面に突っ伏していたそのときだった。  
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