1#彷徨う野良猫

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 「お腹が空いた・・・お腹が空いた・・・」  1匹のガリガリに痩せこけた野良猫が、街の片隅で今にも倒れそうにフラフラと歩いていた。  「前にいつ何か食ったかな・・・一週間前・・・ いや、もっと前かな・・・  そうだ、あの時は・・・」  くらっ・・・      ドテッ!!  突然野良猫の周りがグルグル回り、目眩いが襲ってきてその場で倒れた。  「駄目だ・・・腹ペコでこれ以上歩けない・・・」   野良猫は、悔しそうな目で鉛色の雨空を見上げた。  「野良猫仲間がよく口にする、「死んだら『虹の橋』を渡るんだ」って・・・僕、本当に目の前に『虹の橋』が見えてきたよ・・・  この空の彼方からグングン僕の方に向かって、ああ・・・ああ・・・」  「今さっきから何してるんだ君?」  突然、飼い犬の顔が野良猫の目の前に覗き込んできて、思わずビックリして飛び起きた。  「わん君、君にもこの空に『虹の橋』が見えるかい?」  「バカ言え!!俺は元気だ!!おめーみたいに死に損ないのボロ雑巾と一緒にするな!!ばーか!!」  飼い犬はせせら笑いながら、飼い主のリードに引かれて去っていった。  「チクショウ・・・!!舐められてたまるか!!  こちとら、好きで野良やってねーんだ〜!!」  野良猫は、ノミだらけの身体をかゆさで縁石でスリスリしながらこの冷たい街中のフラフラと歩き続けた。
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