Ⅲ.決戦

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 告白した。全てを出し切った。  もうこれだけでも満足なんだけどさ、ローゼンの返事を聞きたいと思う欲張りな私も存在していて、私にそれを急かしてくる。 「ローゼン、今魔法を解くから。返事を……聞かせて」  私は再び杖を構えて発した。 「<反・透明人間(アンチインビジブル)>!」  杖の先から光が発せられた……と思ったら、それは私の目の前で弾けた。  ……あれ、解除失敗した?  もしかして透明化ってシンプルな反対魔法で解除出来ないのかな。  そんなことが頭をかすめた瞬間、私の体はなにかの感触を覚えたのだ。  唇に、柔らかい感触。  両肩を、力強く掴まれている感触。    ――ハッとした。  気が付くと、私はローゼンに唇を奪われていたのだ。  まさか透明化している間にこんなに距離を詰められているなんて、予測していなかった。魔法が裏目に出た。  え!? なにこれどうなってんの!?  てか私なんか食べたっけ!? 臭くないよね!?  まるで<精神錯乱(コンフュージョン)>をかけられたみたいに、私は混乱してしまった。こんなことなら、先に<捕縛(アレスト)>でもしておいた方が良かったのだろうか。  触れた唇同士を名残惜しそうに分離させながら、ローゼンが発した。 「――俺もずっと、ノイのことが好きだ」  そのローゼンの言葉が、惑乱した私の精神を回復させた。 「俺から告白すべきだったよな。魔法まで使わせて、ごめん」 「……ほんとだよ」  私はギュッとローゼンに抱きついた。手放された杖がその場に横たえる。本当の意味で魔法がいらなくなった瞬間だった。  嬉しかった。安心した。涙が出た。  そして同時に、勿体無かったな、と思った。  なぜなら、私が告白しているときのローゼンの顔が見られなかったから。告白が成功したからって、我ながら虫のいい話だと思う。でもそう思ってしまったのだから仕方がない。  一体どんな顔で告白を受けて、どんな表情で私の前に歩み寄って、どんな目で私に唇を重ねたのだろう。それを知らないって、なんだか寂しいような、勿体無いような気がする。  すごく美しい光景を見ているときは、(まばた)きすら惜しい。  そんな気持ち分かるでしょう。
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