虹色のミッチ

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 窓の外に目をやれば、今日もどんよりとした曇り空。 17才になった僕は、まだ本当の自分を隠したまま。 「ミッチ。……おーい、ミッチ!?」 サトキン、こと佐藤欣吾(さとうきんご)に声をかけられ、僕は我に返った。 「あ、ごめん。ちょっとボーッとしてた。えーっと、文化祭の展示どうする?って話だったよね」 「そだよ。……で、今、サカキから、映画の鑑賞記録作って貼り出しておきゃいーんじゃね、って意見が出たとこ」 「ま、どマイナーなボクらの展示を、わざわざ見に来るヤツなんて、そうそういないと思うけど」 サカキ、こと榊原凛(さかきばらりん)がクールに言い放つ。  そう、僕らは映画研究会。 とはいえ、その実態は、毎週水曜日の放課後、3人で視聴覚室に集まって、映画を観て感想を話し合うだけの、ゆるーい同好会なのだ。 「実はさ、ちょっと、やってみたいことがあるんだけど……」 そう前置きして、僕は私物のDVDをプレイヤーで再生した。  都会に住む3人のドラァグクイーン。 ひとりは性転換者。ひとりはバイセクシャル。ひとりは若くて世間知らず。 砂漠の真ん中にあるリゾート地でショーをするため、3人はおんぼろバスで旅に出る。 「これ、ミッチがこないだマイベストムービーのひとつ、って熱弁ふるってた映画じゃん」
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