act10 一二三SIDE

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器用に強弱を付けて擦り上げられれば自分でするのとは比べ物にならない激しい快感が沸き起こる。悲鳴になりそうなほどの喘ぎを両手で押し隠し、一二三はいやいやと首を振った。 「んっ……ァ、だ、ダメだってば……っ」 「ダメって言う割には、随分気持ちよさそうにしてますけど? 西園寺さん」 「ちが……っ、だってこんな、恥ずかしい事……ッ」 「今更何言ってんだよ」 一二三の両脚を担ぎ上げ、自分のそれで更に追い上げる。先走りで滑りがよくなり、擦る度にニチュニチュと湿った音が部屋中に響く。 「ひァ、んッ、やぁっ……ダメ……だ……ってっ」 目尻に涙を滲ませながら訴えるが、総一郎の手は止まらない。 「も、だめっ、……そう、一郎く……っ、こえが……声、でちゃ……!」 我慢しろと言われたって、与えられる快感が強過ぎて、とてもじゃないけど声を抑える事なんて出来そうにない。 「仕方ないですね、ほら……掴まって」 逃げ腰で壁に背を擦りつけていた一二三を抱き寄せ、自分の首に腕を回させる。 総一郎の服から香る柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐり、眩暈がする。 一二三は言われるままに総一郎の首元にしがみついた。 「あ……っ」 ちょうど総一郎の首筋に唇が当たる位置に持っていかれ、一二三は吐息を零した。 総一郎の首筋に顔を埋めて声を押し殺す。だが、そうすると彼の匂いを強く感じてしまい、余計に興奮が煽られる。 「は……っ、や、もぅ……ッ」 「俺の首、嚙んでもいいから声、抑えて。それとも、誰かに聞かせたいんですか?」 「っ、ち、ちが……っんん……っ」 洩れ出る声を押し殺すように無我夢中で吸い付いた。きつく吸い上げ、歯型を残す。 そうしていないと声も、胸に溢れる正体のわからない感情も抑えることが難しいから。 こんな自分は知らない。知るのが怖い。性の知識に乏しい一二三の精神は、秘め事に対する背徳感と官能の狭間で揺れ動く。 なのに、身体は限界で。もう我慢が利きそうになかった。
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