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家族の事も、自分の事も、俺の事も全て忘れていた
家族にすら怯えている明香里に、俺が出来る事は何もなかった
いや、あんな目で見られる事に、俺が堪えられなかったのかもしれない
明香里は知らない世界で生き直している
初めて知る両親と、見慣れない家で、少しずつ色んな事を覚えて
俺が知ってた明香里はもう、何処にも居ないし
あの明香里と一緒に居た俺を知ってる者も、もう何処にも居ない
高校の制服を着て微笑む明香里を消す
「はっ……。めっちゃ容量空いた」
俺のスマホのアルバムには、どうでもいいような写真だけが残された
俺の中でだけ生き続けたってしょうがない
もう解放してあげないと
連絡先を表示する
明香里
もう、この番号にかける事はないから
この文字が表示される事はないから
だから
「ばいばい。明香里」
俺は、明香里を消した
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