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朝から灰色だった空から雪が舞う。
そんな季節はもう終わりだと思っていた。
ポケットに手を入れて首を竦めた後ろ姿が人混みに紛れて遠くなる。
なのにずっとあなたを捉え続ける自分の視線が忌々しい。
アスファルトに落ちる雪は瞬く間に溶けていく。
東京の雪は積もらない。
甘い囁きも熱い時間も降り注がれたそばから溶けていた。
積み重なって積もらないなら、せめて最初から無かったことにならないものか。
カレンダーの誕生日を消して。
写真を消して。
アドレス消して。
枕ごと洗濯して残り香消して。
恋から愛に変わることの無かった笑顔を明日の記憶から締め出して。
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