たすくの回想

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 ミキには去年告白された。断ったあとも、振り向いてくれるまで待ってるからと泣きもせず、態度も変えずに接してくる。そういうメンタルの強さは凄いと思う。ミキは去年学園祭でミスコンに選ばれて、来年からテレビ局のアナウンサーになることが決まっていた。  ──来年から芸能人みたいな生活だろうし、すぐに忘れるだろ。  噂しているとミキがやってきた。学内では有名だし憧れている女子も多いから視線がさっと集まる。 「あ。ミキちゃん。今たすくに説教してたとこ。人の気持ちをわかるようになれって」 「そんな能力たすくには必要ないんじゃない。今のままでいいと思うの」  自信に満ちた笑み、そして言葉。容姿に恵まれ、実家に恵まれ、頭脳にも恵まれたゆえの余裕。  ミキを見ていると、なんだか考えさせられる。    恵まれているがゆえの余裕は本物なのだろうか。そういうの抜きにしてもこういう笑顔を浮かべられるのだろうかと。 「たすくが、居酒屋で女の子に電話番号渡してたのはびっくりした。あの娘だれ?」  長い髪を撫でながら、ミキが頬杖をついたまま横目でたすくを見る。自分がキレイに見える表情を知り尽くしてる感じがする。男が好感をもつ話し方、声のトーン、そして思わせぶりな微笑み。 こいつは、強豪女子ばかりの女子アナの中でも大物になるに違いない。 「別に。ただの昔の知り合い」
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