第一部 出会い

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 14歳のひなたが、母親に「これが最後の結婚だから」と紹介された相手は、人のよさそうな開業医だった。一体全体どうしたら結婚四度目にしてこんな優良物件を捕まえられるのか、ひなたにとって恋愛や世界は、謎だらけだった。 「ごめんなさいね。少し緊張しているみたいで」 「それはそうだよ。知らない人と暮らすなんてこの年頃の女の子にはとてもきついことだろう」  リビングのテーブルの下には、ゴールデンリトリバーがいて、ひなたを歓迎するように頬をすりつけてきた。  母親がひなたのだんまり具合を詫びると、再婚相手となるおじさんは優しく微笑んだ。  優しそうな人が本当に優しいかはわからない。けれど直観的には、マトモな人だという気がした。  不安定な暮らしを余儀なくされると、いやがうえにも人を見抜く嗅覚みたいなものは発達する。 「もしも不安だったら、一緒に暮らすのはもう少し先でもいいんだよ」  おじさんはひなたにそう言ってくれた。 「私はお母さんが幸せなら、大丈夫です」  ひなたの言葉に母が「この子にも今まで苦労をかけたから」と涙ぐむ。  あと4年したら、きっと一人暮らしもできる。それにさすがに母だっていい加減落ち着いてくれるだろう。そう思った。  ふいにリビングのドアがガチャリと空いて、一人の男の子が現れた。
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