たすくの回想

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 一度ひなたの汚部屋に行ってから、一度も電話もメッセージもない。  会いにいく理由もないが、なんかしらんが気になって仕方がない。 「どーしたたすく。ぼんやりして。なんか悩みか」 「いや別に」 「就職も希望のところに決まったんだろ。あとは残り少ない学生生活を楽しまないと」  社会人になったら、金と引き換えに時間がない。  だから4年になると大体みんな焦って遊びまわる。だが焦って遊んだところで、別に楽しくないだろうと思う。惰性でサークルに所属はしてはいるが、ほとんど顔も出していない。  派手な顔立ちなので、遊んでいると思われがちだが、面倒くさがり屋なので飲み会とかも極力行きたくない。 「やだなー入社して転勤とかなったら、彼女に振られちゃうよー」  すでに転勤の多いメガバンクに就職が決まっているマコトが言う。 「いいじゃん、遠距離で終わるくらいなら終わったほうがお互いのためだろ」 「はー、そういうとこだよ。恋愛できない理由は。人の心の機微がわからない。一回くらい恋でもしたほうがいいって」 「別にわかりたくない」 「もうお前の性格知って寄ってくるつよつよメンタル女子もなかなかいないだろう。ミキくらいか?」
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