プロローグ

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プロローグ

 修学旅行の最終日、伊織(いおり)稜一郎(りょういちろう)と俺、瀬名(せな)一司(かずし)は、一つの布団の中にくるまって息を殺していた。  ついさっきまでは、宿泊先の宿で、同室のメンバーと枕投げ大会を楽しんでいたんだ。  LINEで回ってきた噂話によると、就寝時刻になって『告白イベント』を強硬したカップルがいたらしい。  渡り廊下の端っこでこっそり会っていた二人を、女子の宿泊の階と男子の宿泊の階を交代で見回りしていた生徒指導の先生に見つかった。  その後、「生徒指導の先生と担任の先生が個々の部屋を見回っている! 生徒人数が合っているか、ちゃんと寝ているか、点呼(てんこ)を取りに来た!」という緊急連絡がこっそりLINEで回ってきた。  俺達の部屋の場合、間一髪で布団に飛び込んで、一回目の見回りに間に合った。  「ちゃんと定刻に就寝しています」というフリ。  何で俺が伊織の布団の中にお邪魔しているかというと、伊織の隣に敷かれた俺の布団に、同じ個室のメンバーの蒔田と古村が潜り込んでいるからだ。はみ出てしまった三人目の俺が、伊織に頼んで布団の中に入れてもらった。  そして現在、ランダムで来るという二回目の点呼をやり過ごそうとして、同じ布団の中で横になったまま、俺と伊織は息を殺している。  俺の頭の中ではポクポクという木魚とチーンというおりんの幻の音が、いつかの時と同じように響いていた。
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