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これは昔から私がよく見る夢…
目の前には大きな木がある。
その木の幹の部分にはしめ縄が巻かれていて、しめ縄には紙垂がついてあった。
幼い頃には理解できなかったが、大人に近づくにつれ夢のそれが御神木だと理解する。
夢の中の私は御神木にある願いをした。
私といっても、夢の中の私は本当の私ではない。
夢の中では私は御神木に祈る女性になっているだけで、この人物がなんなのかさえ皆目見当もつかなかった。
まあ、夢とはそういう曖昧なものだ。
御神木の前にいるのは私だけじゃなかった。
隣には男性が立っている。
だけど、顔はぼやけてはっきりと分からない。
なんとなく彼が私にとってとても大切な人だと理解していた。
おそらくそれは私と彼の手がぎゅっと固く結ばれているからだろう。
そして、その握られた手に力が入る。
彼もその手に力を込めた。
「神様…どうか来世では二人がきっと結ばれますように…どうか…どうかよろしくお願いします…」
切実な願いが込められた言葉が御神木へと向けられる。
その時、夢の中の私は彼と共に死ぬことを知っていた。
…理由はよく分からない。
だけど、この二人…私と彼は何かしらの理由から結ばれることはない二人であることは理解した。
そして、結ばれることが叶わないのであれば、共に死を選ぶ…それほどまでに二人は愛し合っている。
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