第三章 夢の形、愛のカタチ

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 本格的な店作りが始まった。  僕はどうしてもメニューにいれたい一皿を試作し、佳生はカクテルを作る。費用を抑えながら改装を頼み、仕入先を探す。必要な資格の取得と届け出の用意もある。 「これ、食べてみて」  何度か作り直したレシピを佳生に食べてもらう。「これって……」 「お子様ランチの大人バージョンをメニューにいれたくて」 「お子様ランチ?」 「気を悪くしたらごめん。こういうの佳生が好きかなって思って」「俺が?」  ステーキ用の牛肉を自分で粗挽きにし、つなぎ無しでハンバーグを焼いた。頭付きの海老フライにタルタルソースを添える。バジルと粉チーズをきかせたハッシュドポテトと野菜のゼリー寄せ。あくまで大人がおいしい味つけにした。国旗も飾ったがこれはいらないかもしれない。僕のノートの、一番最初のレシピだ。値段設定に迷っていて、それによっては食材の選び方が変わってしまう。そもそもメニューにいれられるのか。  無言で食べていた佳生が、小さく頷いた。「こんなの食べてみたかったんだ……」  いつもなら、おいしいときは笑顔でも伝えてくれるのに顔をふせたままだ。余計なことをしてしまったのではと心配になる。 「これ、すげーうまいな。うますぎて涙出てきたわ」  顔をあげた佳生の頬には、初めて見る涙が伝っていた。 「これ看板メニューにしようぜ」  ウェロのメニュー第一号が決まった。
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