自称パチプロ、意地を張る

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「一体何のつもりだ?」  ヴィゴールは構えを解いて肩で息をするファビオを睨んだ。  二人にレベルの概念は無いが「聖なる乙女と薔薇の騎士」の初期設定ではファビオがレベル5、ヴィゴールがレベル8である。  ファビオが身体強化を使ってもヴィゴールの方がステータスが僅かに上で、恩恵(ギフト)を使わないファビオでは刃が立たないのは当然だった。 「良いから攻撃してこいよ、それとも怖いのか?」 「何だと?言わせておけば!」  カッとなったヴィゴールは一気に間合いを詰めた。 「おおおおおっ!」  ヴィゴールの身体が発光する、身体強化を使っての打ち下ろしだ、だが、片手剣を両手で握るファビオはその剣を受け止めた。 「バカな…身体強化も無しで俺の剣を受け止めただと?」  頭に血が登ったヴィゴールは、つい片手で打ち下ろした為に、その体格では両手剣の重さのバランスは崩れ、剣の切っ先に行くに連れて、殆ど威力は無くなっていた。  ファビオは何度も向かって行き、何度も吹っ飛ばされてその事を感じ取っていたのだ。 「ベルミリオは…身体強化を使った俺を…倒したぞ」 「それがどうし…」  ヴィゴールは思い出した、昨日の模擬戦で身体強化を使ったファビオの剣を受け止めるどころか身体強化無しのベルミリオが勝ったことを、そしてその事を八百長だと言ったことを。 「そうか…君たちの戦いを侮辱した事を詫びよう」  その言葉を聞いたファビオは剣を落とし、膝から崩れ落ちる。 「勝者ヴィゴール!」  王太子アレックスの宣言で模擬戦は終わった、結果だけ見れば圧勝だが、ヴィゴールの顔は曇っていた。
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