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自称パチプロ、聖女と再会する
「勝負に勝って試合に負けたってヤツだな」
説明好きのアレックスが満面の笑みでヴィゴールの気持ちを代弁したが、ベルミリオにため息をつかれる。
「逆だ逆、締まらないヤツだな」
「ええっ逆?試合に勝って勝負に勝って?はぁ?」
決め台詞や教訓めいた言葉を使ってみたい年頃なんだろうが、いかんせんうろ覚え過ぎた、アレックスが何をどう間違えたのか心の中で反芻している中、ベルミリオの前に出たヴィゴールは片膝を折り、謝罪の言葉を口にする。
「グランボルカ卿、私は卿の模擬戦を侮辱致しました、謹んで謝罪致します」
「卿の謝罪を受け入れよう、中々面白かったからな、特に『幾ら植えてもキリが無い』だったかな?」
「そ、それは…」
多分満点の答えを貰っているベルミリオに対して、子どものワガママのような事を聞かれてしまったヴィゴールは耳まで真っ赤になったが、王太子アレックスが助け舟を出した。
「いや、ヴィゴールの言っている事もある意味では正しい、戦争なんてものは無くなれば良いんだ」
「殿下の仰る通りです、ですが、無くならないからこそ騎士団が必要なのですよ」
「ああ、だが我らの代では領民がもっと幸せになる様に努力しなくてはな」
「それはそうと上級治癒士を呼んだほうが良さそうですね?」
「えっ?」
「身体強化無しで吹っ飛ばされ続けたんだ、腕の一本くらいは折れてるだろうよ、ヴァーレーン卿にお願いしなくては」
見習い達の訓練の監督官である副団長へお願いしなくては、ベルミリオがそう思った時。
「その必要は無くってよ!」
訓練場の格子が開き、銀色のポニーテールを揺らしながら一人のメイドが入って来た、見習い達があ然とする中アレックス達の前まで歩み寄る。
「シルビア、どうしてこんな所に」
「今朝、食堂で模擬戦の話を聞いたものですからすぐに屋敷に使いを出したのですわ、さぁいらっしゃい!」
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