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「ねえ真白、さっきはごめんね? もうそろそろ許してくれないとお姉ちゃん悲しくて泣いちゃう」
「みおちゃんはきっとましろのことがきらいなんです。だからあんないじわるするんです」
「そんなわけないじゃん! お姉ちゃんは真白が大好きなんだから」
スーパーへの道すがら、焼いたお餅のようにほっぺを膨らませた真白に謝り倒す。風船のように膨れたほっぺをつんつんすると、つついた方とは反対側へぷいっと顔を背ける。真白を怒らせるのは気が引けるが、この膨らんだほっぺの魔力にはどうしても勝てない。許されるのであればむにむにしてはむはむしたい。
「……それならかがりちゃんさんにでんわをしてください」
「え? なんで佳賀里に?」
成美佳賀里は私の同級生。大の仲良しであり、親友と呼べる相手だ。金髪ロン毛でギャルみたいな見た目だが、結構堅実な考え方を持っているというギャップがある。佳賀里も真白が大好物で、よくお菓子を買ってきてくれたりと可愛がってくれている。どうして佳賀里に電話するのかは分からないが、ここは言うことを聞いておこうと電話をかける。
『もしー? こんな朝早くからどったの?』
「おはよー。真白が佳賀里に電話してって言っててさ」
『ましゅまろちゃんがアタシに? なんだろう。ついに告られるのかな』
そんなわけないじゃんと心の中で突っ込みを入れつつ、スマホを真白に渡した。声が聞こえるように、私もスマホに耳を近づける。
「もしもし? かがりちゃんさんですか?」
『はーい! あなたのかがりちゃんさんでーす! ましゅまろちゃんどうしたのー?』
「ましゅまろちゃんじゃありません。ましろのおなまえはましろです」
『あはは、ごめんごめん!』
「かがりちゃんさんにききたいことがあるのです。……みおちゃんはましろのことがきらいなんでしょうか」
『おおお? いきなりだね。なんかあった?』
「きょうはおかいものにいくとみおちゃんがいったので、おうちをでるまえにおといれにいきました。そのときにみおちゃんにおいていかないでくださいとおねがいしたのに、みおちゃんはおしいれにかくれてましろにいじわるしたんです……」
佳賀里に対して真白はぽつぽつと語った。目の前で妹に意地悪したことを親友に報告されると、何だかとても恥ずかしい気持ちになる。佳賀里も真白可愛さで意地悪したことは理解してくれるだろう。だが、これで佳賀里が「お姉ちゃんは真白ちゃんが嫌いなんだよ」とでも口にして真白が誘惑されたあげく佳賀里の妹になってしまったらと考えると気が気でない。どうか変なことを言わないでと心の中で祈りながら待つ。
『お姉ちゃんはね~、真白ちゃんのこと……』
「ましろのこと……」
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