また昔のように

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 月華の部屋に着くとすぐ、月華は僕の両手を握った。 「日向たち、喋ったんだって?」  すっかり大人になったのに、きまり悪そうな顔には子どもの頃の面影がある。ほっとして緊張が緩んだ。 「うん。全部教えてくれた」 「かっこ悪いから言うなって言っておいたのに……俺がもっと大人だったら他に方法があったかもしれないのに、たくさん嫌な思いさせたよな」  ごめんな、と抱きしめてくれる。 「謝らないで。僕、すごく嬉しいんだ。月華とまた一緒にいられる」  僕も月華の胸にぴたりと体を寄せ、頬ずりをした。  久しぶりの月華のぬくもりと匂い。懐かしい場所に帰ってきたときのように、心の奥から安心する。 「っつ……。毬也、俺、もう二度とお前と離れたくない。俺、お前のことが」  僕を抱きしめる腕に力が入り、切ない声で月華が言った。お芝居とはいえ僕を傷つけたと自分を責めて、謝り足りないんだろう。僕を兄弟のように大事に思ってくれているんだもの。すぐに返事をしてあげなくちゃ。 「僕もだよ! 僕だって月華を家族みたいに思ってるからこれからもずっと一緒にいたい。僕、橘さんや楼主様にご納得いただけるよう、世話役をしっかりとやってみせるからね!」  僕が世話役になったことを「やはり間違いでした」と楼主様に言われないように頑張って、月華を安心させるんだ。 「あ、いや、そうじゃなくて、その……」  どうしたのか、座敷で見せたのと同じような困り顔をしている。 「月華? 心配だろうけど、月華が僕を守ってくれるなら僕も月華を守るから、そう不安にならないで?」 「不安なんじゃなくて……いや、今はまだいいか……」  今はまだいい? なにがだろう。  不思議に思って見上げていると、月華は衣装棚に行って桃色の着物を出し、僕に差し出した。蕾の着物だ。 「花から蕾に戻るのは不名誉だと思うけど、蕾なら客に手出しされない。着ていてくれないか?」 「そこまで考えてくれてるの?」 「……誰にも抱かせたくないから」 「え? なに? なんて言ったの?」  月華が声をくぐもらせたので聞こえなかった。何度か聞き返したけど、月華は尻尾をパタパタと振って、「秘密」と笑うだけだった。
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