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「やった! なにして遊ぼっかなあ…」
妖精は縦横無尽にくるくると空を行ったり来たりしている。
「そうだ! 鬼ごっこしよ! 」
『分かった』
間髪入れずに返事をして私はその場でジャンプしたり足をぶらぶらしたりと準備運動を始めた。
すると、おもむろに妖精が他の妖精を手招きした。
「みんなー、遊んでくれるってー! 」
その声の持ち主である妖精は手のひらサイズだというのに不思議なことに良く声が通った。
そのせいでこの森のたくさんの生き物が呼び寄せられた。
妖精だけでなく魔物も………、しかし魔物は妖精には見向きもせずこちらに一直線。
『え? え? 何してるの? 』
(そんな事したら食い殺されッ…、って何で私の方に来てるの?! )
「じゃあ、頑張ってにげてね! 」
笑顔でそう言うと妖精は私の元を離れ上空で私の様子を観察し始めた。
『ー~~~ッ、やっぱり話なんて聞かずに出口を探しておけば良かった……! 』
(二度と妖精なんか信用しない!!! )
そんな後悔をしながら私は走った。
鬼(魔物)に捕まれば私は間違いなくお陀仏だろう。
そう思い、精一杯足を回転させた。
けれど焦燥感から足がもつれてしまった。
次の瞬間視界いっぱいに草地が広がった。
そして足に走る痛み。
『やばい、早く起き上がらないと…ッ! 』
しかし鬼はもう私を捕まえられるほど近くに来ていた。
振り下ろされる鋭い爪。
大きくなっていく風を切る音。
『───────────…あ、死ぬ…』
もう逃げられないと死を覚悟したその時だった。
なんとも言えない不快な音が森に響き渡った。
その音を聞いた途端、もう目と鼻の先という所まで迫っていた魔物達は森の奥へと姿を消した。
『な、何が起こってるの…』
いまだにその不快な音は森に響いている。
その音が妖精の耳にも届いたのか何やら騒騒としている。
そして、このデスゲームの元凶である妖精が観察をやめどこか焦った様子で近づいてきた。
「守り神様!!! 」
『……………は…? 』
◇
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