28話 白亜:モモちゃんと再会

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28話 白亜:モモちゃんと再会

嶺二が普段着ているシャツのようで、小柄な白亜には大きかった。 袖口が手のひらまで覆ってしまうが、シャツからは嶺二の匂いがして、嬉しくなる。 シャツのボタンは、留めるのが難しくて、嶺二が手伝ってくれた。 ベッドから降りて、下着を履き、ルームパンツは長いので折り曲げる。 「やっぱり、サイズが合わないな」 着替えた白亜を見て、嶺二が眉間にしわを寄せる。 怒られたと思って、肩を縮めた。 「ごめんなさい、レージくん」 「……謝らなくていい」 嶺二はそう言って、白亜の頭をなでてくれる。 大きな手のひらにヨシヨシされると、胸の奥がぎゅっとして、好きの気持ちがあふれる。 「レージくん」 抱きついても、嶺二は怒らなかった。 レージは、ママよりあまい。 それに、とっても優しい。 今まで白亜の大好きな人は、ママとモモだけだった。 でも、嶺二も、同じくらい大好き。 「あっ……モモちゃん?」 いつも一緒の、モモの姿が見えない。 白亜はきょろきょろと見渡すが、モモはいなかった。 「モモちゃん、いないっ」 いつもズボンのポケットに入れている。 手を入れて探ってみても、空っぽで何も入っていなかった。 借り物のズボンなので当たり前だが、白亜はそこまで思い至らずに、涙を浮かべた。 「ぅ……モモちゃんっ」 「モモって、あのピンクのぬいぐるみか?」 嶺二に問われて、大きくうなずく。 どこかに落としてしまったのだと思い、悲しくて、ぽろっと涙が落ちる。 「ふぇぇっ」 「な、泣くなっ……そのぬいぐるみなら、拾っておいたぞ」 嶺二の言葉に、パッと顔をあげる。 「ほ、ホントですか?」 「ああ。こっちにこい」 嶺二に促されて部屋を出ると、広い空間が広がっていた。 大きなテレビと、長いソファー。 そして、二人掛けのダイニングテーブルの上に、ちょこんとモモが座りこんでいた。 「モモちゃんっ」 白亜はかけ寄って、モモを腕に抱きしめる。 「モモちゃん、ごめんなさいっ」 不良たちに囲まれた時、落としてしまったことを謝った。 モモの顔をのぞき込むと、つぶらな瞳が白亜に笑いかける。 いつもの愛らしいモモにホッとした。 「レージくん、ありがとう!」 モモを抱いたまま嶺二を見上げる。 けど、嶺二は顔を赤くして、視線を逸らした。 「……飯、食うか?」 「ごはん?」 「ああ」 「たべますっ!」 ごはんと聞いたとたんに、ぐぅっとお腹の虫が鳴く。 それを見て、嶺二がフッと笑った。 「座って待ってろ」 「はい」 木製のダイニングテーブルは、お揃いの椅子が二脚ずつ向かい合っておいてある。 座面部分はクッションになっていて、座るとフカフカした。 「うわぁぁ」 思わずお尻でぴょんと跳ねる。 こんなに座り心地の良い椅子は初めてだ。 何度かそうやって遊んでいたが、嶺二は何も言わなかった。 キッチンで、忙しそうに動いていたが、時折、白亜の方を見てくる。 嶺二と目が合うと嬉しくて、そのたびに白亜はニコニコと笑みを浮かべた。
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