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見える【少年】
空き教室には誰もいなかった。
当たり前と思ったけど、東雲くん曰くときどきここで遊んだりわたしたちみたいにおしゃべりしに来たりする人もいるらしいので、今日はラッキーだ。
「……念の為、鍵かけとこう」
東雲くんはそう言うと、入口のところでゴソゴソと何かしている。
やがてパッと入口が光り、カチリと音が鳴った。
「え、これ魔術でやったの?」
「うん。結界みたいなもの」
試しに扉に手をかけてみるが、全く開かない。
鍵がかかっているというより、扉が強力なボンドでくっつけられている感じだ。
「わ、わわわわ!すごい!東雲くん!」
「…ありがとう。でもこの結界、離乳食レベルの魔術なんだ。3歳くらいで使えるようになる。
……それに俺の結界は貧弱だから、握力30くらいの人が力を入れたらたぶん破られる」
「………」
結界ってそんなものだっけ。
つか握力30って……クラスの男子にも破られちゃうじゃん。
「ま、まあ、たぶんそこまで力入れてこの教室入ろうとする人はいないから大丈夫だよ!それより……」
「ああ。……伊予くんのことだよね」
東雲くんは真っ直ぐな目でわたしを見つめうなずく。
いつもの魔術書をパラパラめくった。
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