序章

1/5
190人が本棚に入れています
本棚に追加
/313ページ

序章

 カーティスは歯を食いしばる。  これから騎士団の昇格試験だというのに、何かがおかしい。  先ほどから身体が火照り、心臓がバクバクと大きく波打っていた。手足の先まで熱い血液がたぎっていくのが、はっきりとわかるほど。 (やられた、あの食事か)  幸いにも、朝食を終え自室に戻ってきたところだった。周囲に人はいない。  じんわりと額に汗がにじみ出る。  騎士団におけるカーティスの立場は微妙なものだった。それは彼の出生と年齢が関係しているのだが、だからこそ今回の昇格試験では何がなんでも等級をあげたかった。 (くそっ)  ダンッと乱暴に部屋の壁を叩く。それだけでこの身体の熱が冷めるわけなどない。  試験まで三時間ある。これが「まだ」なのか「もう」なのかはわからない。だが三時間だ。  荒く呼吸をしながら、できるだけ昂ぶりを静めようと考えてみた。  考えた結果、助けを求める先は治癒室しか思い浮かばなかった。  あそこであれば、この症状を緩和してくれる治療薬があるはずだ。  じわりじわりと下腹部にたまる熱に耐えながら、治癒室へと向かう。
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!