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Ⅰ
「じゃあ、キャラクター作成は友野さんにお願いするわね。期限は1週間で頼むわ」
「え、あ、はい……」
同じ部署の荻原主任に言われて、不本意に満ち溢れた感情でわたしは頷く。
会社を社外にアピールできるようなキャラクターという、とってもざっくりとした依頼。わたしが高校時代に漫画研究部に所属していたからという理由だけで託されてしまった。正直、あんまり絵は上手くないのだけれど。部活をしているフリをして、ほとんどお菓子を食べてしゃべって終わるふざけた部活の取り組み方をしていたツケが、こんな形で回ってくるとは……。
「そうそう、これ、新しいタブレットらしいから、使っていいわよ。ちょっとはモチベが上がると思うから」
荻原主任に手渡されたタブレットは、どこからどうみても普通のイラスト作成用のタブレットだった。
「これ、描いたイラストが完成してから喋り出すんだって」
「それに何のメリットが……?」
イラスト作成にはまったく意味を成さない気がする。もっと実用的な機能が欲しい。
「まあ、書き終わった後に、ちょっと喋ってくれると思ったらちょっとテンション上がるんじゃない? 定型分だとしても、自作のイラストに褒めてもらったら、テンション上がるんじゃない?」
「じゃあ、荻原主任がその仕事やります?」
「わたしはお絵描きなんて絶対嫌」
「……ですよね」
結局、わたしはイラスト作成作業を押し付けられてしまった。就活の時に誇張して漫研内で一番漫画制作を頑張ってました! なんてドヤ顔で言うんじゃなかった。漫画は大好きだったけど、恥ずかしかったからろくに描いたことがないのに。
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