春うらら

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春うらら

つい先週までは寒い日もあったのに、今週は暖かい日が続いてる。 うみがお気に入りのバルコニーでごろんと 日向ぼっこをしていた。 はぁーーーーー。 ため息をつくと幸せが逃げるって 誰かが言っていたな。 私は自分のためにじっくりいれたコーヒーを飲みながらカレンダーを見ていた。 ここに帰って来たのはついこないだのように感じるけれど、もう季節は変わろうとしていた。 先日 偶然 啓介さんに会った。 久しぶりに見る啓介さんは 少し痩せた気もした。 伸びた髪のせいかもしれない。 目が合った途端、心が震えた。 苦しい気持ちよりも 顔を見れて嬉しい気持ちの方が大きかった。 まだ好きなんだな…わたし。 改めて自分の気持ちに気付かされた。 啓介さん、なにか言いたそうな顔をしていた。 私のこと どう思ってるんだろう…。 勝手にマンションから居なくなって、驚いたかな。 それとも… なんとも思ってないのかな。 相変わらず 啓介さんが何を考えているかは さっぱり分からなった。 あの時 茉那さんと一緒だったな…。やはり 啓介さんにとって茉那さんは特別な存在なのだろう。 でも…茉那さんに あんな事を言われて 真斗くんには申し訳なかったと思う。 あれ以来 真斗くんは私を気遣ってくれるようになった。 優しい彼に甘えてしまって 私はダメだな…。 最初に真斗くんに会った時は 息が止まるかと思った。 啓介さんにうり二つだったから。 でも… 性格は正反対だった。 いつも明るくて、会話も上手くて 女の子の扱いに長けていた。 とてもモテるみたいだけど、無理もない。 顔が良いだけでなくて、お調子者っぽいけれどどこか危険な雰囲気にみんな惹かれるんだろう。 うみも真斗くんによく懐いていて、可愛がってもらっていた。 まあ……うみはイケメン好きよね、啓介さんにもすごく懐いてた。 まったく……浮気者なんだから…。 イケメン好きは お母さん譲りかしら…。 性格は違うけれど、真斗くんが優しいのは…啓介さんと同じ。 荷物をさり気なく持ってくれたり、私の好きそうなスイーツを差し入れてくれたり...。 同じプリンをくれた時は びっくりしたな。 ふふふ。 真斗くんのおかげで 私はずいぶん立ち直れたと思う。 また 夕飯ご馳走しなくちゃ。 何がいいかな。 あっ、そろそろ用意してカフェに行く時間だ。 無理言って変えてもらった仕事先は 前に比べると通勤に時間がかかるのだ。 私は 遅刻しないように準備を始めた。
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