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VS魔王①
最終目的地に辿りつく、すこし前、女神をだました魔王のひ孫と遭遇。
相手は正体を隠していたが。
足をくじいた旅人を装い、俺たちに助けを求めたのだ。
勇者はともかく、俺と格闘家ははじめから疑い、その動向に目を光らせて。
真夜中に魔物と密会していたところを御用に。
魔王のひ孫であり「自称副参謀」のわりに、すこし脅しただけで縮みあがってお漏らしをし、べらべらと白状。
それで、女神が幽閉されるまでの詳しい経緯や現状が知れたわけ。
また、彼の証言と、偵察の報告によると、いよいよ準備万端になった魔王が本格的に大規模な戦いをしかけるらしい。
魔王のひ孫の言葉に偽りがないなら、魔王の計画はこう。
火口をマグマで蓋をしたまま、魔界で魔王はお留守番。
屈強の魔物を火口のまわりに隙間なく並べ、がちがちに守りを固めて。
一方で地上のすべての国に、魔物の軍隊を侵攻させる。
「よーいドン!」で同時攻撃をし、国同士が連携したり、救援しあえないよう、一気に叩きつぶすという。
八割方、地上が焦土と化し、国や人が絶望に打ちのめされそうになりながら、天に祈りを捧げるも遅く、神神の力は及ばず。
ほぼ勝利確定したような状況になってから、地上に満を持して舞いおりる魔王。
死屍累々のなか勇者が血まみれに踏んばって、満身創痍であがくのを、高笑いしながら見せしめに人々のまえで惨殺をし、地上支配完了にするつもりと。
なにせ、まえの地上降臨では「いやっほー!地上にもどれたあ!」と浮足立ってしまい、まんまと勇者と伝説の剣によって、鼻っ柱をへし折られたものだから。
自分が受けた以上の屈辱を、勇者にしこたま飲ませて、完膚なきまで叩きのめさないことには気が済まないのだろう。
それでいて、ぎりぎりまで魔界に身を潜めているという、チキンな安全策をとるほど、ひどく慎重にもなっている。
「勇者めええええ!」と激昂するまま、暴れてくれれば、つけいる隙があるのものを。
世界にちらばる、仲間たちが寄せる情報からして、魔王のひ孫の云うとおりのよう。
それぞれの国付近で、魔物が集結して、戦いにそなている動向があると。
国国が同時攻撃されれば「最終決戦に駆けつける」と約束してくれた助けっ人が当てにできなくなる。
どうしたって彼らの故郷や、恩義のある国、地域の防衛のほうを優先するから。
だったら、同時攻撃されるまえに、魔王を倒せばいい。
と思っても、すでにボスレベルの魔物が、火口を取りかこんでいる。
勇者一行の最高値に近いレベルなら倒せなくはないが、ボスクラスを大勢相手するとなれば、時間がかかり、戦いの最中、同時攻撃がはじまるかも。
そうして強者ぞろいの助けっ人を足止めさせ、地上制圧を畳みかける狙いかもしれないし。
「国や故郷を捨てて、助けにこい」なんて、とくにお人よし勇者は呼びかけられず。
といって、俺らのほうが防衛に回るわけにいかず。
守るだけでは、勝ち目はない。
戦いで人は減るばかりの一方、魔物のほうは捕まえた人を火口に落とし、どんどん仲間を量産できるからだ。
その阻止のため、マグマの水晶の奪還が必至。
もちろん、それを肌身はなさず持っているだろう魔王を倒さないことには。
火山に向かえるのは勇者一行と、世界の果ての最付近にある国、エントの王と助けっ人と兵士たちだけ。
エントにしろ、最前線とあって、魔物の同時攻撃の防衛に徹しなければならず、助力を求められないかと思ったが。
一流の剣士であり、豪胆不敵な王は「どうせ戦うなら、こちらから打ってでよう」と。
魔法と変装によって、王が勇者に変身し、軍を率いて火山へ。
「地下にこもって震えているなんて、魔王の名も廃るな!」と声高らかに煽りに煽って、火山を囲う魔物たちをおびきよせようという計画。
挑発にのった魔物が猛進するのと、ひそかにすれちがって勇者一行は火山に向かう。
マグマ、業火を、無傷で通りぬけるための力は、すでに神から授けられているので、急ぐまま思いきって火口にダイブ。
そうして、すっかり油断しているだろう魔王に、奇襲をしかけてやるのだ。
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