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「炎症くらいで、禁止なのか?」
その言葉を聞いた凪子は、信じられない思いでいた。
もし自分が夫の立場だったら、
具合が悪い妻に向かって、そんな無神経な事は言わないだろう。
それなのに、今良輔は『炎症くらい』と言ってのけたのだ。
(私が愛していた人は、こんな人だったの?)
凪子はかなり衝撃を受けていた。
しかしその思いには気づかれないように平静を装って言った。
「うん......癖になるともっとやっかいみたい...なんか細菌が関連しているらしいのよ。今までこんな事、一度もなかったのに不思議よねぇ...」
凪子は大きなため息をつきながら、わざと深刻に言う。
そして更に付け加えた。
「あなたまさか、風俗とか行ってないわよね?」
凪子は精一杯の演技をしながら、疑わしい目で良輔を見つめた。
「いっ、行くわけないだろうっ!」
「あっ、なんか動揺してる? あやしーい!」
「そっそんな訳ないだろう! とにかく、完治するまではしっかり治療しろよ! それにしてもしばらく凪子とデキないのかぁ...」
良輔は心から残念そうに言う。
「でもちょうど良かったわ! これから新ブランドの件で私も忙しくなるから! それにあなただって課長昇進を目前に控えて、これからますます頑張らなきゃいけない時期だしね!」
「まあそうだな......」
良輔は元気のない声で言うと、
ソファーにドカッと座りテレビをつけた。
そして、何か考え事をしながらテレビをじっと見つめていた。
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