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その夜、良輔はゴルフで疲れたのか早めに就寝した。 夕食の際、凪子は良輔に日本酒を勧めた。 凪子は良輔に日本酒を飲ませようと、わざと和食メニューにしていたのだ。 良輔は酒に強い方だが、なぜか日本酒を飲んだ時だけは、 すぐに眠くなり朝までぐっすり眠る。 「明日は日曜日で朝寝坊出来るんだから、たまにはいいんじゃない?」 凪子は笑顔でいつもより多めにお酌をした。 凪子の思惑通り、良輔はいつもよりもかなり早めに寝室へ行った。 しばらくして寝室を覗くと、軽いいびきが聞こえている。 どうやらぐっすり眠っているようだ。 凪子はそっと良輔側にあるナイトテーブルへ行くと、 良輔のスマホを手にし、音を立てないようにリビングへ戻った。 それからは、スマホのロック解除に専念する。 (うん、もうっ! こんな事なら指紋認証にしてくれていた方がよっぽど楽だったかも!) 凪子はそう心の中で毒を吐いた。 思いつく限りの数字は全部入れてみた。 しかし解除出来ない。 良輔の誕生日、車のナンバー、ゴルフの最高スコア、 良輔の母両親の誕生日、入社した年、凪子の誕生日も入れてみた。 それらの数字を逆さに並べた数字も入れてみたが、全部駄目だった。 そこで、凪子はハッと思いついた。 ダメ元で、二人の結婚記念日の数字を入れてみる事にした。 1022 すると、ロックはあっさり解除された。 (信じられない! 愛人とのやり取りを隠す為に結婚記念日の数字を使うなんて!) 凪子は怒りのあまり動悸が激しくなる。 人は怒り過ぎても心臓がドキドキするらしい。 おそらく血圧がかなり上がっているのだろう。 (早く離婚しないと早死にしそうだわ...) そう毒づきながら、メッセージの画面を開いた。
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