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「げっぷ」
男は汚い息を吐きながら、テーブルの上の料理を平らげた。
そして食後のワインを飲みながらスマホを取り出し、ここのレストランの評価を投稿する。
『ゲロまず。人間の食べ物じゃない。食べ放題だからって何出してもいいと思ってるふざけた店。絶対におススメしない』
そう言いながら最低点をつける。
実際は真逆の感想だったが、男は評判のいい店の料理にケチをつけるのが趣味だった。
当然、誰が書いたかは店側もわからない。
だからこうして匿名で店を陥れられるのだ。
男はそれが愉快でならなかった。
その時、店のウェイターが追加の料理を持ってきた。
「お待たせしました、ラストオーダーの料理でございます」
しかし男は言った。
「ああ、もうそれいらないから。下げて」
「お、お客様?」
困惑するウェイター。
食べ放題の店では客が残すということはよくあるが、彼のようにたくさん注文しておいて全部残すというのはあり得なかった。
「こちら、お客様が最後に注文したものとなっておりますが……」
「うん、注文した時は食べられると思ったんだけどねえ。でも急にお腹が痛くなっちゃって。食べられないや」
「で、ですが……ご注文していただいた料理は全部食べていただく決まりになっておりまして……」
「決まり? 決まりってなに?」
「メニューにきちんと載っております」
「そんなとこまで読むわけないじゃん。それともなに? この店は客にメニューに書いてあるもの全部読ませてるわけ? そりゃ横暴だよ」
「そう言われましても……」
「ああ、わかったわかった。そういう態度取るならこの店の評価、最低点つけとくから」
実際はすでに最低点を付けてるのだが、脅し文句で店員をさらに困らせる。
店員はすぐに店長に相談し、男を出禁という形で店を追い出した。
(ふん、二度とくるかバーカ。さて、次はどの店をおちょくってやるかな)
男はほんの少しの優越感にひたりながら店を後にしたのだった。
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