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「さてどうする? このまま軍を潰してやっても構わんが?」
嘲笑的な余裕は見せず、だが相手の出方次第では実行できるという圧を視線一つに含めるペペ。
しかしクレフトはそんなペペを他所に目を瞑り悠然としていた。その姿はまさしく一国の王にふさわしいものだった。
「その必要は無い」
「蓋を開けてみれば多少は見世物に値すると期待したが残念だな」
ペペは口ではそう言いつつも内心ではやはり安堵していた。
「(ふぅ。国一つを三人で相手するなんて絶対キツイよ。良かった)」
だが顔に浮かんでいたのは正真正銘、魔王の表情。
「ならばこの国も吾輩のモノ」
「じゃがこの国はこれまで通りで構わんのだな?」
「好きにしろ。戦力にすらならん者に興味はない。だがあれは貰っていく」
ペペの視線は兵士によって運ばれるミシェルの姿を射抜くように捉えていた。
「戦力支援はしよう。じゃがあくまでも支援。あの子をお主に明け渡す訳では無い」
「吾輩が求めているのは駒だ。必要な時に使えればいい。それ以外の時など、むしろ邪魔なだけだ」
「うむ。では先の話通りこの瞬間から、サードン王国国王はお主と歩みを共にしよう」
「共ではない。貴様らが吾輩についてくるだけのこと」
丁度そのタイミングでペペの背後へ戻って来たルシフェル。その手には赤く滲んだ包帯が巻かれていた。だが風穴が開いたにしては量は少ない。
「ひとつ聞きたい事がある」
するとクレフトはそんな事を口にし、視線だけで内容を尋ね返すペペ。
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