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「あなた一体……!」
「この子はここに座る権利がある。そもそも認知しかしていないあなた方よりも、ずっと」
まさかの大奥様が怯んでいた。
彼は一列後ろ──祖父の婚外子達 を睨んでそう言うと、私の隣に堂々と座った。
「俺の一存で全ては変わる。それを忘れるな」
ざわめく親族席に向かってそう強く言うと、全員が黙った。
その後私は、この日の最後まで彼と行動を共にした。
今思えば、私を悪意に晒されぬよう見張っていたのかも知れない。ただ当時の私は少し怖くて、トイレに行きたいのを言い出せなくて号泣してしまったことは非常に申し訳なかった話だ。
*
私は鏡を目の前に着付けをしていた。
今日選んだ着物は付け下げという着物。振り袖よりも落ち着いた柄の着物だけど、それなりのよそ行き用の着物。色はそこまで華美でない薄黄色を選んだ。金糸混じりのサギソウの模様が控え目で上品。ただ華やかさは足りないので、帯は黒地にカラフルな扇や花が散りばめられた豪華な帯を選んだ。
そして帯には、チェーンの帯飾りを垂らす。
さすがに付けて行かないと悪いかな、と。実は元々は二連になっていたもので、私が使わないなぁと思っていたら侑軌が「じゃぁ自分が貰う」とのことで、取り外しできる部分を侑軌にあげた。だから元々はブレスレットとしてのものではなかったりする。
侑軌よりも一回り太いプラチナのチェーンは、より着物を華やかに見せた。
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