「命が尽きるまで愛していたい」全年齢版

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「緊急報告、近江に多数の鬼を確認」 サイレンと共にAIの声が部屋に響き渡る。 「近江か、近いな」 そう言って立ち上がろうとする姉様を制して「アリス姉様はダメです。私が行って来ます」と告げて、細川に姉様の事を頼み、バイクに跨がり出陣する。 「我は、今川義元の血を引く今川カレン、この血の呼び掛けに応じ顕現せよ!宗三左文字!!」 鬼と対峙した私は、私のマイクロチップとリンクしている宗三左文字を呼び出して、鬼共を切り捨てていく。 「宗三左文字、織田の血か木下の血と共鳴するものと思っていたけど」 私の血と共鳴してくれた宗三左文字は、私の手によく馴染み、まるで体の一部のように自在に操れる。 「宗三左文字があれば、私は負ける気がしない!!」 私はまるで踊るように刃を振るった。 「戻ったか、カレン」 鬼を掃討した私は、すぐに姉様のいる京へと戻った。 「目に見えた鬼は全て斬ってきましたが、またいつ現れるか、、、とはいえしばらくは大丈夫だと思います」 「苦労、ゆっくり休め」 報告を済ませた私は、姉様のいる部屋の近くにある仮眠室へ行って一眠りさせてもらった。 あれから数ヶ月、いつものように姉様の近くで働いていると、予想もしてなかった事件が起こった。 マイクロチップで日の本全ての侍の位置情報を把握していたつもりが、幕府のセキュリティが何者かによってハッキングされていたのだ。 その事に気づいた時には、織田は国外逃亡、松平がそれに加担したと思われ逃走中という事態になり、織田、松平のお陰で守られていた京に、大量の鬼が迫って来ている状況に追い込まれた。 「京一帯にバリアを展開したが、持って一日と言ったところだろうな」 姉様に陰はなく、むしろ待っていたという雰囲気さえ感じる笑みを浮かべている。 細川は京に居る侍達をまとめるために外に出ており、今この部屋に居るのは私と姉様だけ。 姉様は私を見てこう尋ねてきた。 「思い残した事はないか?」 その問いに私はこう返した。 「思い残した事、たくさんあって困るほどです、でも、もし叶うなら、夢でも良いので今川では無くただのカレンとして、アリス姉様と過ごして見たかったです」 「なんだそれは」と笑って姉様は続ける。 「ならば少しの間、余は将軍職を放棄するとしよう。カレン、余の可愛い妹弟子よ、この姉弟子に出来る事であればなんでも言うてみよ」 そう言って微笑む姉様に私はお願いする。 「抱きしめても良いですか?、アリス姉様」 「アリスと呼び捨てて良い」 姉様は両手を広げ、私を優しく包みこんでくれた。 「アリス、私、ずっとアリスが大好きだった、子供の頃から一緒に鍛錬をして、子供の頃から身分なんてお構い無しに無茶苦茶するアリスに本当に苦労させられたけど、アリスの誰よりも優しい、誰かのためになるなら自らをも顧みないそんな危なっかしいアリスがほっとけなくて、心惹かれて。姉妹のような存在じゃなくて、もっと深い、アリスの特別になりかった」 姉様は頭を優しく撫でて言葉を紡ぐ。 「昔平和だった頃は同性での恋愛も許されておったようだな。そんな時代に生まれておれば、余も将軍職などせずにすんで、カレンと普通に出会い、普通に恋をしておおったかもしれぬな。カレン、余もカレンが好きだ、みんなが呆れる中カレンだけは昔からずっと余の側に居て支えてくれた。今はもはやこのような状況だ、子孫を残すもなにも無かろう。カレン、余の心をカレンにくれてやるゆえ、カレンの心を余によこせ」 姉様が私の顔に手を添えて来た。 私はそれに逆らわずにそっと目を閉じて姉様に委ねる。 重なった唇は暫く時を忘れ、永遠と思えるほどに心が熱くなった。
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