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時は、鬼が跋扈する戦国乱世。
私はそんな世界に、日の本の侍として生まれた。
「16年間のカリキュラムの完了を確認しました、あなたへ貸与させる神剣は、宗三左文字となります。貸与された神剣は、あなたに埋め込まれたマイクロチップとリンクしております、必要に応じて召喚してください。また、あなたの生命活動が停止した場合は、自動で神剣は保管庫へ戻るので、安心してお使い下さい」
修練期間を終えた私は、AIの音声に従い、神剣を受け取る。
「これでお前も立派な侍か」
そんな私を出迎えてくれたのは姉妹弟子であり、足利幕府の征夷大将軍、足利アリスだ。
「アリス姉様、わざわざこんなところまで来なくても、しかも御一人なのですか?」
将軍様という身分なのに護衛もつけずにいる姉様に小言を言う。
「大事な妹弟子が一人前の侍になるのだ、足も運びたくなると言うものだ」
しかし姉様は「はっはっはっ」と笑った。
それを見て頭を抱える私だったが、姉様が凛とした顔をこちらに向けてきたので、まっすぐに姉様を見据える。
「今川カレンよ、余の下で励め!」そう言って姉様は去っていった。
私の仕事は足利将軍の近衛、身の回りのお世話となり、毎日姉様に振り回されると言う、幼少期となんら変わりのない生活を送ることになった。
「アリス姉様はいつまでも子供みたいに振る舞われて、少しは成長して欲しいものです」
「なにを言うかカレン、余はちゃんと征夷大将軍としての仕事をこなしているではないか」
「仕事が終わった後に、織田の方や松平の方などに、手合わせなどと言って、暴れるのを止めてくださいと言っているのです」
「余が直々に稽古をつけてやっておるのだ、感謝こそされ、怒られるいわれはないぞ」
まったくこの人は、少しは自身の身分と言うものを解って頂きたい。
「ところでだ、最近は肥後の国で鬼の動きが活発だと聞いておるが?」
鬼、それはどこから生まれ出でたのかわからない異形の怪物、日の本だけでなく、全世界に現れた鬼たちにより、世界は混沌に包まれた。
核兵器も効かない鬼たちに唯一対抗出来るのは、神々の力が宿りし神剣達であった。
イギリスの王が、カーテナと言う神剣で、鬼を退治したと言う話を聞いた各国は、博物館などに展示されてる神剣達を、戦場へと解き放ったのである。
そして日の本もそれに習い、また侍が活躍する時代に帰ったのだ。
「肥後の件は加藤に任せてあるので、心配は要らないかと」
鬼の出現により、人間同士の争いをしてる暇はなくなったが、人類は緩やかに滅びに向かっていた。
「駿府も危ないと聞くが、いや、今はどこもかしこもか、逆に平和な場所を探す方が難しいか」
姉様は陰った顔で笑う。
「駿府には松平の本多がいますのでしばらくは持つでしょう」
鬼は人を食らい、食われた人は鬼となる。
まるで昔に大流行したと言われるゾンビ映画のような世界だ。
そんな中でこうして組織だって動けているのは奇跡としか言いようがないだろう。
しかし戦える人の数は減るばかりで、今残っている一騎当千の侍達のお陰で、辛うじて日の本は命を繋いでいると言う状況だ。
「皆命を賭けて戦っているというのに、余は椅子に座って死ねと命じることしか出来ないとはな」
陰った顔で愚痴をこぼす。
アリス姉様はとても優しい人だ、とても優しい人だから、耐えられないのだろう。
好きあらば戦場へと赴こうとする姉様を、何度止めた事かわからない。
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