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こぼれたお茶をひとなめしてみる。
「皇妃様!?」
ハンナが止めようとしたけど、それを手で制した。
いざとなったら【解毒】の魔法がある。
「大丈夫ですか?」
「これくらい平気よ。……原因はお茶に入っていた毒のようね」
ハンナは青ざめた顔で、私を見る。
「何度も私が倒れていたのは、食事に毒を盛られていたからもしれないわ」
未来では、愛されない皇妃ユリアナは嫉妬に狂い、冷たい夫に絶望して心を病んで亡くなったと言われている。
心を病むのもわかる。
皇宮全体がユリアナを大切にせず、クリスティナの味方なのだ。
――ユリアナは孤独だったのよ。本人になってみないとわからないものね。
心の弱い人間であれば、傷つき怯え、疑心暗鬼に陥り、まともな判断ができなかったはずだ。
けれど、私は大魔女ヘルトルーデ。
聖女ではなく魔女である。
冷たい夫に期待してないし、クリスティナに嫉妬心はゼロ。
ユリアナになってしまった私が、この先どうしていくべきか――夕暮れの冷たい風に身を震わせた。
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