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幸運にも入手に成功した生徒曰く「至高の美味しさ」「食べなければ人生を損してる」「一度食べれば病みつきになる」らしいので、毎週水曜にはカレーパン好きの生徒の間で熾烈な争いが繰り広げられる。
菜乃花はそもそもカレーパンが好きではないので、手に入れられなかったと嘆く生徒を慰める側だった。
「凄い人気だよね、カレーパン。なるほど、パン目当てて頑張ってたんだ」
「今日は珍しく授業が早く終わったから、いけるかなって……。……怒った?」
「え? なんで怒るの?」
何故か怯えているらしい千影を見返して、菜乃花は目をぱちくりさせた。
「カレーパン如きで怪我させられたのかって思わない?」
「ああ、そんなこと。全然」
軽い口調で言って、左手を振る。
「私はそんなにカレーパン好きじゃないけど、たとえば超美味しいモンブランとかだったら、全力で狙いにいったと思うし。それだけ好きなものがあるのはいいことじゃない?」
階段を駆け下りるのは良くないことだけどね、というのは言わずにおいた。
それはさっき梶浦が言ったし、誰より千影自身が身に染みてわかっているはずだ。
「…………」
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