黎明

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「キヨさん、迎えにきましたよ」 赤いベンチに腰掛けて、閉じていた瞳を開いてみると軍靴が目に入って。 そろそろと、信じられない気持ちで視線を上げれば軍服に身を包み 変わらない優しい笑顔を浮かべて手を差し伸べてくれるあの人が目の前に。 「待っていたんです、あの日からずっと」 涙が溢れて、彼の姿がボヤけてしまう。 「もう、こんなにおばあさんになってしまいました」 そう下を向いたら 「君はあの頃のままとても綺麗だ。」 そう言って、優しく頬に手を添えてくれる。 「幸せに、長生きしてくれて、ありがとう」 そう言って、私の手を包んで……そして優しく抱きしめてくれる。 「私もこの日を待っていたんだ。キミを迎えに来る日を」
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