白虎の神様

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「なによ、そんなに強張らなくても取って食ったりしないわよ〜!」 緊張する私に気がついたのか、お姉さんはあっけらかんとした明るい笑顔を浮かべて私の背中をバシバシ叩いた。 「い、痛いです」 とっさにそう返せば、「ごめん、ごめん」とやっぱり明るい調子で返ってくる。お姉さんは改めて私に向き合うと、にこりと笑顔を見せた。 「初めまして、私は狐のあやかし雅よ。この屋敷で、あなたの身の回りのお世話を任されたから、よろしく」 「雅って呼んで」と言って手を差し出してくる彼女に、私はひとまず「私は、あやめです」と握手に応えた。 「ちなみに、あやめは、あの狛犬兄弟からはどこまで話を聞いたの?」 「ここが、白虎の神様が守る西殿だというところまでは……」 「なんだ、まだその程度なの?」 はあとため息をつく雅さんに、私は「あの」と呼びかけた。 「詳しく教えていただけますか。ここはどういう場所なのか。私がなぜ、ここにいるのか」 先ほどの狛犬兄弟からは、その理由を聞くことができなかった。だけど、私は知りたい。死ぬと思っていた私が、この場所で生かされている訳を──。 私の必死そうな様子が伝わったのか、雅さんはやや顔を俯かせたあと、顔を上げて私を見つめる。感情の読めない、まっすぐな瞳が少し怖かったけれど、私は目を逸さぬまま。すると、しばらくして雅さんが「じゃあ、私から説明しましょうか」と切り出し、ことの経緯を話し始めた。
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