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 わたしの母方のおばあちゃんである九条紗雪は、例の桜舞島に住んでいる。八十歳手前にしてメイク次第で三十代に化ける若さと美貌の持ち主。島に住む者は、多かれ少なかれ特殊な力を持つ。彼女の若さもそのあたりに関係があるらしい。  わたしは、おばあちゃんに似ているとよく言われる。美人で知られる彼女に似ているのは、ちょっと自慢だったりする。小さい頃は特に似ていたらしく、昔のわたしの写真を見ると、正直めちゃくちゃ可愛い。  世界の方に気を取られていたが、わたしはちょっとレトロな感じの青いワンピースを着ていた。おばあちゃんの家のアルバムで見たことがある。 「鈴井さん、どうやらここは過去の世界らしいですよ」 「カコって過去未来のカコ?」 「そうです。見た感じだと五十年くらいは前ですかね」 「まじ? わたしそんなに若返っちゃったってこと?」 「五十年も若返ったら存在がなくなりますよ」  まだ頭が不明瞭らしい鈴井さんは置いておいて、わたしはひとまず水を手のひらにすくった。湖は澄んでいるが、よく考えればこのまま飲むのはちょっと怖い。わたしは顔だけ洗うに済ませた。  これが本物のタイムトラベルだとすれば、すごい体験だ。溢れ出す好奇心で、既に疲れはどこかに吹き飛んでいた。
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