大団円

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 * 「あーあ、終わっちゃった。つまんない。」 (せっかくヘッセン王子を手引きしたのに、もう少しちゃんとしてくれないと……。つまんないな。)  ディルク王子は大広間を見下ろす吹き抜けの窓から見下ろして、まだその場に留まっている母や姉を見下ろした。  * 「姫、そなた魔法を使えるようになったのか?」  白雪姫はまだえぐえぐと泣いているので、女王はマーリンに視線を向けた。マーリンは首を振った。 「まだです。女王陛下の許可を得てからと。仕組みなどは教えました。」 「そうか……。」  女王は目を伏せた。 「白雪姫、そなたには魔法の才はある。今は使えなくなっているがな。」 「うぇ……?」 「六年前、そなたは魔法でディルクを傷つけたのだ。」 「え……ええっ?」  広間はシンと静寂に包まれた。そのことは白雪姫以外は皆知っていることだ。  当時の白雪姫にとっては、いつものいたずらの延長だった。ちょっと脅かそうと戯れに火魔法を発動させると、思いのほか火の粉が弾けた。  飛び散った火の粉の矢が当時二才のディルクに向かって飛び、とっさにうずくまったディルク王子の背中に降り注いだ。  ディルク王子の怪我は幸い治癒魔法で完治したが、女王は悩みに悩んだ末マーリンの力を借りて白雪姫の魔力を封印し記憶を消した。  そして、魔法に頼らずとも正しい為政者となるように教育を施そうとした。白雪姫はそこから逃げ出したが。 「そうだな、今なら……きちんと勉強をして魔法を悪用しないと誓えるのなら簡単なものから徐々に使えるように封印を解こう。マーリンがそばにいるのなら大丈夫だろう。」 「お……お母さま……。」 「姫、王族は自分を律せねばならぬ。魔法も自分のためではなく人のために使えるように訓練するのだ。できるか?」  白雪姫はマーリンをちらりと見て「はい」と頷いた。 「そうか。それとそなたの立場にふさわしい知識を得ることも大切なことだ。わかるな?」 「はい。」  女王は母の顔をして娘の顔を見て微笑んだ。  *    上からその様子を見下ろしていたディルク王子はぐぐっと伸びをして、頭の後ろで腕を組んでその場を離れ、指をくるりと回して鏡の監視から逃れる認識阻害魔法を解いた。
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