大団円

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大団円

「そんな! 私はどうすればいいんだ!」  ヘッセン王子の叫びが大広間にこだまする。   「あなたは三つの国を巻き込んだ騒動を起こしたんですよ。バレてるんですからね。」  ドラキュラ伯爵が静かに言った。  最初は考えなしだったが、二人の姫を利用してヴィルドゥゲン王国とバジーレ王国を手に入れようとした。 「そなたの罪はそなたの国で裁いてもらおう。」  女王は玉座の置いてある壇上から降り、白雪姫に近づいた。  女王がまだ泣きじゃくる白雪姫の頭を撫でながら優しく言った。 「寂しい思いをさせて申し訳なかった。そなたはまだ十四才。今からでも帰ってきてこの国で過ごせば良い。」  白雪姫は大きな黒い瞳を母親に向けた。  母は自分が寂しかったことを理解してくれていたのか。  *  白雪姫はずっと寂しかった。幼い頃、優しかった母は、父が死んでからいつも青く厳しい顔をしていた。困らせている自覚はあったが、わがままを言って嘘をつき、家出をした。  小人の家で母が迎えに来てくれるのを待っていたが、やってくるのは贈り物を携えた女官ばかり。ひねくれた姫はヘッセン王子について外国まで行ってしまった。  そうなると、もはや意地になり迎えにも応じずバジーレ王国に留まった。  そこへ、ヘッセン王子の裏切り。  帰る場所は生まれた祖国しか思い浮かばなかった。  *   「不実なヘッセン王子との婚約は解消させよう。もともと政略結婚でもなかったのだし。」    白雪姫は目にいっぱいの涙を溜めて頷いた。   「かえう……。ヴィルドゥゲン王国にかえうぅー。」  白雪姫は女王に抱きついてわんわん泣いた。   「ちょ、ちょっと待ってください。婚約を解消するのは……!」 「国ごとぶっ潰すぞ。」  女王の低い声が響いた。 「そもそも我が国とバジーレ王国の姫を拉致したのはそちらじゃ。報復をされても文句は言えまい?」 「合意の上ですよ! 白雪姫も了承していたのです!」   「まだ幼かった姫に判断力があったとは思えませんねえ。」 「そうですわね。うまく言いくるめられたのかもしれませんし。茨姫だって寝起きだったし。」  ドラキュラ伯爵夫妻がうんうんと頷きながら話していると、白雪姫もうんうんと頷いている。    ついでにいつの間にかいた小人たちもうんうんと頷いている(急遽証人として鏡に召喚されていた)。   「お前ら、あれほど祝福しておいて……!」  王子が小人たちを睨んだが、小人たちは揃って目を逸らした。 「で、ラプンツェル。その方はとりあえず王子と共にバード王国へ行け。」 「ええっ!?」  驚愕するラプンツェルに宰相が女王の言葉を補足する。 「その二人の子どもはどう見てもヘッセン王子の子。今は庶子とはいえバード王国国王の判断が必要です。」 「ええっ、イヤなんだけど。この国の方がイケメン多いし。まだ開拓されてないイケメンを探したい! あっ、白雪姫の弟さんとかいいかも!」 「……連れて行け。」  騎士がヘッセン王子とラプンツェル、女官が二人の子どもを連れて大広間を出て行った。
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