三十になったら

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「お父さんは回り道が好きだからね」  三十五歳。春分の日。お花見。三人で出かける。桜の名所のお城まで歩いて向かう途中、本屋に寄った。娘に絵本を買ってあげたかったから。 「帰りでいいのにね」  沙也加と手を繋いで会計をする僕の後ろで娘の桜は笑っている。 「いいのよ。お父さんは回り道をしないと進めない人だから」  何か変わったかというとそんなに変わってないだろう。ただ沙也加と桜がいればゆっくりでも進めていく気がする。 「お待たせ。ほら春の絵本」  春分の日。お花見。春の絵本を買う。一つ増えた僕の約束。僕は悩んだとき君らと約束するよ。ずっと先の約束でも。回り道しても君らといればいいじゃん。そんな気持ちでさ。
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