つむじ風

1/21
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ

つむじ風

街路樹のイチョウが黄色く色づいている。 中にはまだ緑の葉のほうが多い木もあるが、ずらっと並んだほとんどは、十二月にしては異様に暖かい陽気の中、明るい色彩を放っていた。 足元に散った落ち葉は、人が忙しなく行き合う歩道を黄色に染め上げている。 こっちの街路樹は、イチョウなんだな。 澄んだ青空を背景にイチョウの黄葉を見上げながら、カナはそんなことを思った。 風見カナは、二カ月ほど前にこの地へ引っ越してきたばかりだ。 以前住んでいた地域の街路樹は、ケヤキであった。 旧街道沿いに整然と並んだケヤキはかなりの大きさで、冬に向かって舞い落ちてくる葉の量はかなりのものだった。 なので、秋が始まって早い時期に業者が入り、バッサバッサと枝を切り落としていた。 ほぼ幹だけの姿となったケヤキは、大木の威厳がなくなり、どうにも貧相に思えたものだ。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!