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心底嬉しそうな表情で語るルルメリアを見ると、私の方まで笑みがこぼれた。
お母さん方、子ども達ともう一度別れの挨拶をすると、それぞれマギーさんとハンナちゃんに見送られて帰路に着くのだった。
私はルルメリアと手を繋いで自宅を目指した。
「ルル、今日はどうだった?」
「すっごくたのしかった!」
「それは良かった」
にこにこと笑みを浮かべるルルメリアに、私はどんなことをしたのか尋ねる。
「皆で何して遊んだの?」
「うんとね。まずはおえかき!」
「お絵描きかぁ」
「うん! みんなあたしのえがじょうずってほめてくれたの」
「それは嬉しいね」
どうやら皆でお喋りしながら絵を描くのが楽しかったようだ。
「それでね、それでね。みんなとおひめさまごっこしたんだー!」
「お姫様ごっこか……」
まさか家でやっていたことをそのまましたのだろうか。少しだけ心配が過るものの、ルルメリアの言葉で安堵が生まれた。
「みんなでおちゃかいしたんだ!」
「お茶会かぁ。とっても素敵だったんだろうね」
「うん! すっごくたのしかった!」
それなら微笑ましい光景だ。よく思い出してみれば、私がルルメリアにしたのも教えとは言えもっとこうすればお姫様っぽくなるよという助言なので、貴族だと露呈することはない。
(……没落貴族だというのは簡単だけど、気を遣わせたくはないな)
きっと優しい皆さんのことだから、貴族という肩書に反応して意識してしまうはずだ。でも私は、せっかくできたルルメリアのお友達の関係を崩したくはない。
「おかーさんは? おーさんとなにしたの?」
「私? 私とオースティン様は花市場に行ってきたんだ」
「はないちば?」
キョトンとするルルメリアに、花市場についてざっくり説明した。
「えー! いいなぁ。あたしも行きたかった」
「ごめんね、日にちが被っちゃったから」
「あたしもおいしいものたべたかった」
なるほどそっちか。
オースティン様と会えなかったことももちろん残念がっているとは思うが、子どもの本心としては美味しいものがほしかったようだ。
「ルル。それならね、お家にとっても美味しいプリンがあるよ」
「ぷりん⁉」
勢いよく私の方を見上げるルルメリア。
私はニッと口角を上げた。
「それもね、ただ美味しいだけじゃないんだよ」
「え?」
「なんと、オースティン様が作ってくれたプリンなの」
「えぇっおーさんが⁉ すごーい!」
その瞬間、一気に目を輝かせるルルメリア。
ぱあっとより明るい笑顔が顔一面に広がった
その後、ルルメリアは家に到着すると物凄い速さでプリンを平らげてしまった。見てるこっちが嬉しくなる食べっぷりは、オースティン様に見せてあげたかったなと感じるほどだった。
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