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決意と安堵の帰り道
演奏会という次の約束を交わしたところで、今回はお開きとなった。
ルルメリアのお迎えもあるので、花市場の会場で解散すると、私はそのままマギーさん宅へ向かった。
「演奏会……」
久しぶりに貴族の世界へ足を踏み入れるのだから、私こそ淑女教育をし直さないといけない。ルルメリアのことを言っている場合ではないだろう。
(……せめて今度は、侍女だなんて言われないように)
ぐっと思いながらも足を止める。お店のガラス越しに映る自分は間違いなく、令嬢とはかけ離れたものだった。
ぼさぼさの髪に化粧けのない顔。何より、平民に染まりきっている自分がこちらをみていた。
平民に染まることは決して悪いことではない。むしろ、没落貴族なのだから正しい身の振り方だと思っていた。しかし、このままでは演奏会には行けないし貴族には見られない。
「……自分磨き、しないと」
ずっと後回しにしていた上に、今後もするつもりがなかったこと。
ルルメリア第一優先で、自分のことをあまり考えていなかった。
(……でもそれは、ルルを言い訳にしてるだけね)
頑張ればきっと両立できる。
そう心の中で炎を灯しながら、ルルメリアの元へと急ぐのだった。
マギーさん宅に到着すると、ちょうど他のお母さん方も到着して子ども達が解散し始めた時間だった。私はすぐにマギーさんに挨拶をした。
「マギーさん、本日は本当にありがとうございました」
「いいのよクロエさん。ハンナも皆も、ルルちゃんと遊べて楽しかったって言ってたから」
そう言ってもらえると、胸の負担が軽くなる。マギーさんの温かな言葉を受けながら、ルルメリアの方を見れば、笑顔で他の子ども達と話していた。
(……今日ルルをこっちに連れてきて、本当に良かった)
ルルメリアは子ども達の中心なのか、真ん中で楽しそうに笑っていた。
「もしよろしければ、これからもルルメリアと遊んでただけますか」
「もちろんよ!」
「ありがとうございます……! 今度は是非我が家に」
「あら、ありがとうクロエさん。でも無理はしないでね」
マギーさんは最後まで私の方を気遣う言葉を選び続けてくれた。他のお母さん方も、今度はうちでと言ってくださり、母同士の関係も良いものになっていた。
「おかーさん!」
「ルル」
タタタとこちらに駆けて来たルルメリアを迎える。他の子ども達も、お母さんたちの方へ合流していった。
「皆にバイバイした?」
「うん! またあそぼーってはなしもしたよ!」
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