12.望むもの全部、あげる

7/9
188人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
次から次へとあふれだす涙をそのままにして、駐車場の自分の車へと、急ぎ足で向かう。 大地から死角になる場所に行ったら、涙を拭こうと思った。 その時、大地が駆け寄ってくる足音がして、続けて、ぐいと二の腕を乱暴につかまれた。 振り向かされ、もう一方の二の腕も、つかまれる。 「僕がまいさんを必要だって言ったら、ずっと、一生っ……側にいてくれる!?」 勢いに任せて言ったようで、私の顔を見た大地は、驚いたように言葉をつまらせた。 「……泣いて……いたの……?」 「うっさいわね!」 両腕をつかまれて思うように涙をぬぐえずにいる自分が、恥ずかしいやら情けないやらで、八つ当たりぎみに大地に怒鳴った。 ふっ……と、目もとを(やわ)らげて、大地が言った。 「なんでだろ……この前は、まいさんの泣き顔を見て、すごく苦しかったのに……今日は、すごく嬉しい。 ……あと、笑える」 「人の顔見て、笑ってるんじゃないわよ、バカ! 手、離しなさいよ!」 「ヤダ。まいさんが、僕のさっきの質問にうなずいてくれるまで、離さない」 「信じらんない! ずっとこのまま情けない顔を私にさらさせるつもり!? サイテーな男ね、あんたっ……───」 見事に唇をふさがれて、あんまりにも悔しくて、その舌噛み切ってやろうかと思ったのに。 身体の方が、心よりずっと素直で、大地のくちづけに応えてしまう。
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!