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そういう関係だと、大地は恋愛できないの? 信じることが、できない?
それならそれで、確かにもう私たちの間には、一片の繋がりも残っちゃいないわ。
あんたはあきらめるって言ったものね。上等よ。お望み通り、言ってあげる」
私は笑った。
大地も、自分自身も、あざけるように。
「大地と姉弟じゃなくて、私、本当に嬉しいわ」
言って、きびすを返す。
来た道を、大地に指し示した。
「私は、一人でも行くわよ。少ないとはいえ、何人かの男と付き合って、別れてきたんだもの。
また繰り返すだけだわ。
また……私を本当に必要としてくれる存在を、探すだけ」
鑑定書を握りしめたまま、大地は身動ぎひとつしない。
宙を見据えたまま、私の言葉を聞いていたのかいないのか……なんの反応も示さなかった。
「……先に車に戻っているわ。落ち着いたら、来なさいよ」
手をつないで歩いて来た道を、今度はひとりで歩いて行く。
隣にいて欲しかった存在は、もういない。
大地が『実の姉』としての私しか必要としないのなら、仕方ない。
『母親のような姉』としての私しか望まないのなら、どうしようもない。
『血の繋がり』しか求めていないのなら……───。
そこまで考えて、私はもう、涙をおさえることができなかった。
……大地にとって、恋愛関係を結ぶ相手が近親者でなければ意味がないのだとしたら、私は───。
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