第一章  転生

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第一章  転生

目覚めたとき、最初に目に入ってきたのは自然そのものを取り込んだかのような天井だ。 体を動かそうとするも、思うように動かせず、何なら視界に入った自身のものと思われる手は、まるで紅葉(もみじ)のような赤児(あかご)の手であった。 そのことに(しばら)呆然(ぼうぜん)としたのち、扉が開くときのような木の(きし)みが聞こえると同時に、一組の男女の声が聞こえた。 「あら?もう目が覚めていたのね。ふふ、なんだか(ほう)けたような顔をしているわ」 「え、ほんとかい?アーサー、僕がパパだよ。わかるかい?」 「私はママよ」 頭上(ずじょう)から覗き込んできた男女の言葉にまたも思考がフリーズする。 アーサー、と呼ばれたからにはそれは今世(こんせ)の自身の名前であろうことは察せられるし、自身を()してパパママというからには今世の両親であることは、何かしらの特殊(とくしゅ)な事情でもない限りはまず間違いないだろう。 まあ特殊な事情があったとしても、特にこれといった支障(ししょう)があるわけでもないのだから、素直に両親として受け入れたほうが楽である。 「あ、ぅあ…まー」 「まぁ…!この子は随分(ずいぶん)と早く話せるようになりそうね」 「ママだけずるい!僕も呼んでほしいのにぃ…!」 両親の言葉に答えるように言葉を発しようとするも、うまく舌が回らずに母音(ぼおん)ばかりが(こぼ)れるが、奇跡的に一文字だけ発音がうまくいった。 が、この(ぶん)だと父までは呼べなさそうだと、父には悪いがアーサーは早々に遠い目をしながら諦めた。
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