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次の日の昼休み。
お弁当を持って屋上に向かった。
なぜか晴くんに会いたくなって、約束もしていないのに衝動的に屋上へ足が向かっていた。
無事、屋上に入る扉の前まで辿り着き、ドアノブに手を掛ける。あとは開けて外を確認するだけ。
……なのだけど。
「…何で着いてくるの。」
「いや、教室から歩いてるのが見えたから。」
「…そういう話じゃないんだけど。」
それなのに、何故か途中から凪が後ろから着いて来た。そして、今まさに私が扉を開けようとしている腕を掴んで止めている。
晴くんと付き合ったあの日から、凪とは一切の関わりを絶っていた。当然私から連絡することはなかったのだが、意外にも凪からの接触も全くなかった。
だからこそ、なぜ今になって突っかかってくるのかが分からない。苛立ちをぶつけるように力強く腕を振り払い、凪をキッと睨みつける。
「…どっか行ってよ。」
「今から先輩に会いにいくの?」
「…関係ないでしょ。放っておいて。」
そう言って、再びドアノブに手を掛けると凪もまた腕を掴んで制止してきた。
何なの。
「離せ」と、目で訴えても動じない。それどころか、絶対に行かせないという意思の強さに比例するように腕を掴む力は増していく。
黙って睨み合い、お互いを牽制し続ける。
意図の読めない凪の行動が、苛立ちを更に加速させた。
「何で止めるの。凪に関係ないよね?」
「…屋上には行かない方がいい。」
「…理由は?」
「…」
行かない方がいい、と言っておきながら理由は言わずに口を噤んでしまうあたりが、悪い意味で凪らしい。
どうせ、私を引き留めている理由だって、私のことが好きだからとかそんな理由だろう。
話し下手で、言葉足らず。
そのくせ感情的に行動する。
昔から、この男のこういう言動がちぐはぐなところが面倒くさいと思っている。
私が呆れたように溜息を零すと、凪が躊躇いがちにゆっくりと口を開いた。
「楓は…信じないと思う。」
「…は?何の話?」
「確証もないし。」
「だから、何の話?はっきり言って。」
もはや苛立ちを隠すこともなく凪にぶつける。
凪は困ったような、何かを我慢するかのような顔をしながら呟いた。
「九条先輩……多分、浮気してる。」
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