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ゆっくり距離が近づいてきて、スッと人差し指を立てると、彼は口元に置いた。
「今日のことは、俺と沼崎だけの秘密な。絶対、誰にも言わないで」
もしかしたら、これはもう恋なのかもしれない。
悪戯に笑う彼に、あたしはゆっくり頷いた。
今日見た、問題児でやんちゃな長谷部くんの泣き顔は、あたしだけの秘密だ。
そして、真面目じゃないあたしの姿も、長谷部くんだけに知られた秘密。
「かわいいじゃん、浴衣。また学校で会おうな」
ふわりと笑う長谷部くんにホッとする。
なんだか、夏休みが明けるのが楽しみになる。
あたしはこれから、彼に恋をしてしまうのかもしれない。
空に立ち上ってゆく花火が幾重にも煌めく。上がり続ける花火が、あたしの恋心を掻き立てる。
夜空が、世界が、長谷部くんとの出逢いで、キラキラと煌めく世界に変わっていった。
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