これはもう、恋なのかもしれない。

8/8
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 ゆっくり距離が近づいてきて、スッと人差し指を立てると、彼は口元に置いた。 「今日のことは、俺と沼崎だけの秘密な。絶対、誰にも言わないで」  もしかしたら、これはもう恋なのかもしれない。  悪戯に笑う彼に、あたしはゆっくり頷いた。  今日見た、問題児でやんちゃな長谷部くんの泣き顔は、あたしだけの秘密だ。  そして、真面目じゃないあたしの姿も、長谷部くんだけに知られた秘密。 「かわいいじゃん、浴衣。また学校で会おうな」  ふわりと笑う長谷部くんにホッとする。  なんだか、夏休みが明けるのが楽しみになる。  あたしはこれから、彼に恋をしてしまうのかもしれない。  空に立ち上ってゆく花火が幾重にも煌めく。上がり続ける花火が、あたしの恋心を掻き立てる。  夜空が、世界が、長谷部くんとの出逢いで、キラキラと煌めく世界に変わっていった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!