愛せば苦脳

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どうして、と聞くのは野暮な気がした。 それならと、わたしは弱く彼に抱きついた。 「…………なに可愛いことしてんの」 わたしの背中を撫でながら、彼はそんなことを言う。 ふと泣きそうになるほど優しい声に、ふるふると首を横に振る。 ただ、なんとなく。 彼を自分から抱きしめてみたかった。 「押し倒していい?」 そう聞かれて、慌てて再度ふるふると首を振れば、クスッと笑われた。 「生殺しかよ」 「…………?」 「いや、こっちの話」 そう言って麗日は、わたしを強く柔らかく抱きしめてくれる。 それだけで十分に幸せだと思った。 この人に拾ってもらえたことが、いちばんの幸せなのかもしれないと本気で思ったのだ。
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